若者として生きていると「流行り」というやつはそれなりに重要だ.
女子中学生でもあろうものなら「流行りのテレビ番組くらい見ていなければハブられる」って妹が言っていた(アニメしか見てなかったけど).
ウィンタースポーツにも流行があって,おおまかには「スノーボード」と「ショートスキー」(これはちょっと古いかも)だ.
若者的にはこのあたりがメジャーで,長い板に乗って滑る人はそんなに多くない.
だから,同級生たちとスキー場に行くと,多くの人がスノーボードだったりする.
え?スノーボード?やりませんよ.
やったことないけれど(食わず嫌い).
というわけで,スノーボードが嫌いだ,という話をします.
まず,上手い人を見かけることが稀だ.
ゲレンデを見渡していて,スキーはかなり上手い人がいる.
モーグルに突入していくやつは総じて上手い.
それに対してスノーボードは,基本的に座ってるヤツしか見かけない.
いや,たまーに本当に上手い人もいるのだけれど,基本的にはどの人もどっこいどっこい.
「ああ,ゲレンデを滑れるんだ」というくらいの人ばかりに見える.
これはつまり,スノーボードを始める人,やる人,やり続ける人はそれなりにいるかもしれないが,上位に食い込む人が少ないということになる.
原因は,スノーボード自体の奥がそれほど深くない,もしくはある程度までは簡単に行くが,それ以上になるのは大変,ということだろう.
なので,たとえ俺が今から初めても,上手くなるにはそれなりに手間がかかるということになる.
それに対する見返りが,あまり魅力的に感じない.
上手いボーダーはいる.いわゆるエッジで滑っている人や,無理やりにモーグルに突入していく人だ.
カービングと同じくエッジで滑るということは,俺が求めるところはただ一つ.
カービングスキーよりスピードが出るのかという一点に尽きる.
カービングスキーのターンで,山回りから谷回りに入る瞬間の加速の気持ちよさは半端じゃない.
エッジを切り返して谷側に内倒するときの外足の加速には,得も言われぬ快感がある.
これはおそらく,ボードでは味わえない.
モーグルに関しても,スキーのモーグルというやつは普通に降りてきているように見えて,大きく分けて2つある.
①ずらして滑る
モーグルバーンは,つまりはコブだ.
ずらしの場合は,コブの溝と同じ方向に板を落とすのではなく,ラインを直線的に描いて,板をずらしながら滑る.
ずらしといっても,エッジで雪面を削るんじゃない.
板の全面を雪面につけたまま,荷重移動でずらして減速する.
斜度がきついと,速度が出すぎてしまうけれど,割かし滑りやすいやり方ではある.
②バンクマジック
バンクでは,コブの溝に板を落とさず,コブの縁を,まるでカービングのショートターンのように抜けていく.
この場合,ラインはコブの溝の外側を回り込むように取る.
これをやると,コブの溝の深さ関係なく,まったく疲れずに格好良くモーグルを降りてこられる.
このあたりの奥深さは,なかなか1枚板のボードでは実現できない.
そして,これ以外に何か魅力的なことがあるのだろうか?
新雪が滑りやすい?
確かに.
板が2枚のスキーと違って,ボードは新雪内で曲がるときに,加重した側の板だけが沈んでしまって転ぶ,ということがなくなる.
だけれど,そんなのは両足加重ができれば大した問題ではない.
簡単に実現できるからといって,それ以上のご利益があるわけでもない.
次に,嫌な思い出しかない.
俺のように80年代~90年代くらいに生まれ,親がスキーをやっていたりすると,子供のころからスキー場に連れて行かれる.
立てない時時などは,親のリュックに背負われて寒いスキー場を連れまわされるという,まさしく連行なのだが.
そうすると,初めてゲレンデに出たくらいの時期に大量のスノーボーダーに出くわしている.
この人たちに対して,全然いい思い出がないので,そもそも入口からして嫌いなのだ.
①邪魔である
ゲレンデ内で座り込むのはたいていスノーボードである.
このころはまだスキー場が混んでいた時代なので,それはそれは邪魔であった.
②後ろから接近されるときの音が怖い
子供心に憶えていることは,後ろから接近してくるスノーボードは,その接地面積からしても,音がでかくて怖い.
背後から雪を削りながら接近してくるのは,子供としては怖い.
③親が好きではない
子供心に聴かされた覚えがあるのは,たいてい愚痴である.
完全な偏見だけれど.
このようにして,「わざわざ今から始める気にはなれない」と思い続けて7年くらい経った.
友達から聞くのは,「スノーボードの方が簡単」という話ばかりだ.
おそらく,「滑れない」という状態から「だいたいの雪面で滑れる」状態になるのに必要な労力は,スノーボードの方が少ない.
だから,「ある程度まで滑れる人」が大多数になっている状態もうなずける.
おそらく,数少ないメリットは,「みんなと一緒」になれることくらいなものだろう.
でも,残念なことにその楽しさをかなぐり捨ててでも,スキーの方に執着するくらいに,俺はスキーの方が好きなんだ.