今年はなんといっても『駒田蒸留所へようこそ』が良かった.
TVアニメ含めた 2022年 2023年アニメの中で一番の出来といっても過言ではない.
見るのが遅くなってしまったので,今頃これを書いているけど,終盤なのでおそらくもう上映館もかなり減ってしまっていると思う.
P.A.WORKSのアニメのお仕事シリーズというのは,背後に壮大なストーリーもなければ世界を救ったりもしない,もちろん異世界に行ったりもしないごく平凡な日常ではある. けれど,2010年代に流行った日常系ゆるふわアニメとは少し違っていて,多少の事件はあるし,そこには成長も挫折もある場合が多い. こういう塩梅が非常にちょうど良くて,リアルなアニメに仕上がっている.
さらに早見沙織はこのアニメの声にぴったりだ.実に落ち着いていて空気感にマッチしている.むしろこれを見たあとでは早見沙織以外この声は思いつかない.
駒田蒸留所も,この路線は健在で,実にいい塩梅で仕上がっている.いや,むしろ短い,もっと長い時間かけて見せてほしいくらいのアニメだった. テーマ自体に「時間がかかるもの」であることが読み取れるので,劇場版120分弱だと,アニメのほうが短く感じてしまう.まぁ作るのには相当時間がかかったのだろうが.
吉原正行監督作品は『有頂天家族』以来だけど,あれよりはだいぶリアルによった作品になっている.ただ,気になるのは背景美術くらい. ウィスキーやグラスの表現力はさすがP.A.WORKSという実に見事な仕上がりだけど,空や雲といった美術は『有頂天家族』のときのようなアニメ調.雲を見るとはっきりアニメだと認識させられるのだけれど,これにはなにか意味があるんだろうか. ここまでリアルによった表現で,綺麗になっているのに,なぜ空だけ「アニメです」というような主張にするんだろう.そこだけがちょっと気になった.
これはもっと早く見に行けばよかったと後悔.もう一度劇場に行ってもいいくらいの作品だった.