「深刻化する著作権侵害
『罰則化』などの対策検討を」
http://www.komei.or.jp/news/detail/20120516_8087
http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-9550.html#more
なんか見落としはないかい?
これは本当に違法ダウンロードで事足りるからCDを買わなくなったということなのか?
日本レコード協会の調査による違法ダウンロード数自体は、まぁおそらくそんなに間違った数字ではないのだろう。
だからといって、このアンケート結果を見て、「違法ダウンロードがあるから音楽業界が不況なんだ!」という話になるのだろうか。
そもそも、動画サイトをはじめとする、インターネット上でコンテンツを享受する人たちって、「これを知らない奴は金を払っているんだろうけど、俺は違うよ」なんて人たちばかりなのだろうか。
本当にそれだけなら、違法ダウンロードを規制すればいい。
かなり難しい話だけど、インターネット上から市販されている音楽ファイルをすべて削除すればいい。
そうすれば音楽業界は潤うようになると言っているんでしょう。
でも、見落としていると思うのは、音楽に費やす金の合計が減ったということの原因は本当に違法ダウンロードなのかい?
可能性としてあるのは、
・音楽自体に興味を示す人間が減った
・音楽には興味があるのだが、高品質な有料コンテンツではなく無料のコンテンツのほうが楽しくなった
じゃないか。
無料のコンテンツというものを説明しよう。
これが、おそらく「CDを買う人が減った」などという次元ではなく、もっとヤバイところにきているのだと思う。
初音ミクを見るとわかる。
初音ミクというのは、ソフトこそ有料で、売り出している企業はもちろん利益を上げているのだけれど、コンテンツ自体が有料になっているケースは極めて稀である。
そして、あれだけ人気があって、とりあえずこの先数年で衰えそうにない。
これって、動画サイトのおかげで、俺たちは「市販されているコンテンツを金を払わずに手に入れられる」ということより「市販されているコンテンツに近いクオリティのもの、もしくはそれ以上のものを作るアマチュアが提供する無料のコンテンツを大量に手に入れられる」事のほうが大きいと思う。
だから初音ミクはいまだにニコニコ動画の中で大きな地位を得ているし、同動画サイト内では生放送を含め、歌ってみた、演奏してみた系の動画が非常に多い。
つまり、どんな形であれ「コンテンツに金を払うこと」それ自体が揺らいでいる。
プロのクオリティ、という安定した高いクオリティを常に要求しなければ、違法性はまったく関係なく、アマチュアの作るコンテンツで俺たちはかなり充実している。
だから、普通の感覚「これがほしいと思ったら金を払う」という感覚ではなくて、「物凄く好きだ」とか「作っている人たちを支えたい」とか、そう思わない限りCDを買うという行動を思いつかない。
だって、プロの作る曲それ自体は金を払わないと手に入らないけれど、それをマネて歌ってみる人がたくさんいて、その上位5%くらいは本当にうまい。
さらに、そういった2次創作はパロディを含んでいたりして、よけい面白くなるようにできている。
それが、ほぼすべて無料で手に入るんだから、オリジナルの曲自体がかなり好きだったりしない限りCDなんて買わなくていい。
だから、無料で良質なコンテンツが大量に流れれば流れるほど、高品質な有料コンテンツが幅を利かせられる領域は狭くなる。
現在、ニコニコ動画の会員数も生放送の番組数も、右肩上がりだ。
こんなにコンテンツ配信者があふれてくると、有料コンテンツだけで生きていける層というのが、本当に上位層だけになって、残りがみんな無料の側に回るしかないんじゃないか。
圧倒的な売り上げや人気を誇っているならともかく、それなりの人気や売り上げしか持たないプロというのは、ここまで広がった無料コンテンツクリエイターに対抗できるんだろうか。
それはコンテンツのクオリティだけの問題じゃなくて、「相手は無料で提供していて自分たちは有料」という圧倒的に不利な地平に立っている。
確かに、違法ダウンロードが占める割合は大きい。
これで損失している音楽業界の売上というのは確かに存在する。
だけど、それをすべて規制したからといって、それは俺たち利用者からしてみればひたすら不便なだけで、そもそもCDを買うという文化圏にいなければ、もはや気に留めることもない産業の一部にならないか。
もともと、著作権法の「私的使用」というやつは、個人的に使う分にはよしとされていた例外部分だ。
でも、それがないと、個人がコンテンツを扱うにはあまりにも不便だった。
逆にコンテンツの普及の妨げになるし、金を払ってくれた人に対してひたすら不便を強いるだけになってしまう。
もちろん、それはデジタルコンテンツというものを想定しないで設計したということも、ひとつ大きな要因になっている。
だから、厳罰化すれば多少は上向きになるのかもしれない。
だけど、それは結果的に、無料コンテンツで満足する人たちや、コンテンツを作る人たちをどんどん増やして、最終的には、プロの中で有料だというハンデを背負いつつ無料コンテンツに対抗できる、本当に上位層だけを残してそれ以外を切り捨てることになるんでないのかな。