俺はMADというものが大好きだった。
今日はMADのお話です。
MADというのは「くるっている、ばかげている」という意味を持つらしいのですが、主に俺が好きなものはMAD動画と呼ばれるものです。
古きものではこんなものまである。
これ、今の10代20代じゃわからないと思うので、元ネタをのっけよう。
つまりですね、サイボーグ009というアニメがありました。
そのOPが2つ目に貼った動画です。
そのOPの、曲だけを抜き出し、セーラームーンのOPアニメーションにそっくりそのまま曲を挿げ替えると、1つ目の動画のようになります。
しかし、見比べればわかるとおり、そっくりそのまま当てはめただけでも、驚くほど同じ構造になってしまっている。
はっきりいって、くだらない。
MADというやつは、どこを見渡しても、大外こんなくだらないものしかない。
そして、こんなくだらないものが数限りなく存在するのが、登場当初からの動画サイトの変わらぬ姿である。
俺たちは、ニコニコ動画に違法アップロードされたテレビ放映アニメが消されたって、そんなに文句は言わない。
それは「法律としては当然のことだし、その法律の存在する意味もなんとなく理解していて、おおむね同意している」と思っている。
そして、「どうしても見たければテレビを見てHDDに撮る」とか「DVDを買う」という正規の手段に出れば、誰にも文句を言われないことも知っている。
だけれど、動画サイトにおける著作権の問題はここにとどまらない。
先ほどのようなMAD動画を作って動画サイトにアップロードすることはダメなのだろうか。
権利的には許可を取っていない以上、アウトだ。
そうやって、俺たちはニコニコ動画にアップロードされた数々の有名MAD動画が消されているところを目撃してきた。
しかし、そんなところで権利を主張して、果たしてDVDの売り上げは伸びるのだろうか?というか、主張して消されると、権利者には何か利益が生まれるのだろうか。
これについては運営側もおそらく困るところで、MAD動画というやつは、あまり頻繁に削除されてはいない。
ただ、何か方針が変わったり、一つ問題になっている奴が片付くと、そのルールにのっとって一斉削除されるときがある。
そのたびに俺たちは「なんで?」という釈然としない思いが、テレビ放映アニメが消されたときなんかよりよっぽど強く残る。
先ほど言った通り、本編に比べればよっぽどくだらないし、本当にくだらないものが大部分を占めている。
だけど、そういうものは昨今の動画サイトを支えてきたものだ。
いくらニコニコ動画でコメントがつけられるなんて新しい機能が出てきたところで、10分耐久のとかちつくちてがなければ俺はニコニコ動画を見なかったし、テニミュがなければ俺のところにニコニコ動画というサイトの情報すら届かなかった。
多分俺たちはみんなそんなものだ。
組曲ニコニコ動画がなければこんなにいろんなニコニコの文化を知らなかっただろうし、アイドルマスターなんて知りもしないゲームだった。
単純に絵と音楽を組み合わせるだけでも、ひとつのMADで2つのアニメの素材を使う。
それは、もちろん両者を知っている人間が見たらネタがわかるから面白い。
だけど、それ以上に、俺たちは「片方だけ知ってるから見る」という流れから「もう一方の元ネタを調べる」という流れが、かなりの確率で起こるのだ。
そして、それを見てしまったりしている。
見ている側の視点にしてみれば、面白いから気になる、というだけの話だ。
作っている側にしてみれば、これが自分の「このアニメが好き」っていう思いから生まれてくる作品だ。
そういうものが好きだし、それがクリエイターというやつが一番最初にすることだと思う。
もちろん、原作側からすれば「勝手に使われた」と思うと嫌な気持ちになるのもわかる。
そして、境界がまったくないから、どこまでを消すとか、どこまでを残すとか、そんなことはやっぱり俺にはわからないし決められない。
だけれど、こういうのを、権利者の許可なく素材を使っているからといって、全部消されてしまうのが、なんというか、とても悲しいことなんだ。