【星を追う子ども】夏を待っている間は楽しみ【感想】

みなさんさようなら.

今日はあっついです.

この前まで寒くて閉じこもっていた俺の元気がだんだん復活しつつあります

いや,暑いって素晴らしい.

夏は聖地巡礼したい場所がいっぱいあって,ホント最高だよ.

今年のイチオシは,秩父です.

割と近いので金銭的に楽です.

ちなみに,あの花聖地巡礼になります.

さて,

昨日は「星を追う子ども」を見てきました.

前半はネタバレしない方向で解説するんで,大丈夫です.

新海誠,秒速以来,4年ぶりの新作.

この監督はやはり絵について触れるべきでしょう.

絵の綺麗さは素晴らしく,特に背景についてはびっくりするような美しさです.

リアル・・・という意味とはちょっと違って,なんか「加工されてるんじゃね?」と疑うような光の入り方をしている写真とかってあるじゃないですか.

ああいう綺麗さなんですね.

でも,アニメだから写真と違って違和感が出ないというところが強みです.

アニメとして見ているので,すごく綺麗な背景として違和感ゼロです.

まぁこれは雲の向こう,星のこえあたりからですね.

ただ,進化しつつはあります.

今までも,気づくところでは気づくくらいの頻度で使用されていた技法

背景に対してピントをずらすという,演出を多用してきました.

以前より格段に増えた.

カメラを意識させる部分というか,誰かの視線で見ているというより,カメラのレンズをのぞきこんだ感じ,というのが正しい.

何かを見るときでも,周りの背景が(特に手前になる側)ボケている絵を意図的に何カットも用意している.

それと,実際にカメラのピントを動かすという動きもあった.

演出として,入り込みやすいか,という点においては後述.

まず,アニメーションでこういう表現を多用することはもともとかなり大変です.

特にアナログで彩色,撮影を行っていたセルアニメでは,カメラのピントを動かすために,背景のピントを少しずつ変えていく絵を描く,というのはものすごくめんどくさい.

そういう部分はデジタルで大分楽にはなっているだろうけど.

それにしても,多用するというのはかなりの労力であることは間違いない.

そして演出として.

こういう画面は,あまりストーリーに直結する部分に多用されると,話から離れてしまう.

特にカメラっぽい動き,というのは,物語をある意味達観させるような感覚を得る.

だから,メインのキャラを動かすときや,誰かの視点に近いときに使うべきではない.

まぁあまりそういうシーンは見られませんでしたが.

どちらかというと画面の切り替えか.

2時間尺の映画になると,観客を休ませるシーンというのを必ず作らなきゃいけなくて,そういう部分で使っている感が強い.

ただ,効果的かといわれると,「どちらかというとPVのような感じで画面の動きが速い」印象を受けた.

以前は桜の花びらを落とすシーンでは,花びらは一枚ずつ書いて動かす.

そこに光を,前述の写真のように,普通では映らないように当てていく.

そのぐらいだったんですが.

今回は,それを映した直後にすべてぼかす.

カメラのピントが手前に移動し,手前の花びら2枚にピントが合って,それをスローで動かす.

というような演出がなされていました.

そして,背景の樹木や植物.

これについてはかなり手が込んでいるんですが,どうも雲の向こうのときのような鮮明さに欠ける気がする.

葉っぱドアップのときなどは良いんです.

そうじゃなくて,高所から見下ろした時や,山全体が映るときなどの,個々の木々の鮮明さがイマイチだった.

設定されている季節が,春なので,山としてはまだまだ緑が少ないというのもあるのだろうけど,やはりそのような感じは受けた.

さらに,人物.

これは進化したと評価すべきなんでしょう.

ただ,どうもファンタジーなんですよね.

本当にジブリっぽい人間になってきて,俺は回想シーンのラフっぽい絵の方が好きだった.

人物に関しては.

髪の毛とか,動きとか,服とか,靴とか.

そういう細かい部分や,細かいしぐさが,アニメーション的なんですね.

背景がもともと写実的な絵を描いているのに,キャラがちょっとあってない感じなんですよ.

それは色合い的な意味ではなくて,線の方です.

そこはちょっと不満.

俺はかなり写実的な絵の方がお好みでして.

だから若林厚史や,松本憲生よりも黄瀬和哉西尾鉄也沖浦啓之なんかの絵が好きなんですね.

まぁそれはアニメによりけりなんですが.

今回は背景に対して浮いている感じがするのでちょっと不満でした.

最後にストーリー.

話は予想通りそんなに面白くないです.

これはネタバレなしで話すのは結構難しいんですが.

予告からもわかるとおり,前作まではかなり現実的な話,というか感情移入しやすく,日常的にありがちな風景が多かったんですよね.

まぁ雲の向こうは,北海道の部分だけが少し違ったんですが,学生時代の夏休みという面ではすごく日常的で思い出深いです.

ところが,今回は全体的にファンタジーっぽいんですよね.

つまり,冒険なんですよ.

これが,いったいどういうところから生まれてきたのかはよくわからないんですが,路線が少し変わった気がする.

現実的なお話ならあまり文句は言わないんですが,ファンタジーになるとかなり言いたいことはあります.

物語の作りこみはイマイチ.

ストーリー全体の流れはいいんですが,バトルシーンや,旅立つシーンなど,抑えなければならないシーンがイマイチ印象が薄い.

それと,前半をかなり説明しないせいで,後半での感情移入が乏しい.

ファンタジーなのにドキドキ感があまりない.

演出的には後半結構いいはずなんですが…….

話が深くない上にわかりやすすぎて,原案そのものに少し不安を感じる.

脚本は結構作風が変わりました.

以前は,セリフとセリフの間が詰まっているような,ちょっと演出的な意図を感じるセリフがあったんですが.

そういう部分が一層されて,普通のセリフ回しになってました.

まぁその辺は今回から本職の声優がメインになってきたというのがあるのかもしれません.

声に関しては,断然,今までの作品より聴きやすいです.

さぁ,ここまでネタバレなしで来たつもりです.

ここからはネタバレしていきますので,見る予定がある方はご遠慮ください.

ファンタジーで冒険にするなら,冒険に出る前の準備段階の部分ってかなり後半に響くんですね.

ここが甘い.

後半になっても,いつまでたっても,主人公がアガルタに来た意味がわからない.

それは主人公が答えられない,ということが問題なのではなく,本当に流れだけでついてきてしまったような,そんなショボさを感じる.

現代っ子に冒険させたらこんなものかもしれないと,今一瞬思ったんだけど,だとしたらこのストーリー展開はないだろう.

このサブキャラのポテンシャルの高さはどう考えても冒険させる気満々なんだろ.

そして,前半で,シンとの交流が全然ないんですよ.

ホント,助けてもらってそれで終わり.

ここで,主人公の感情描写がほとんどない状態で,この人死んでも,観客側としては全然感情移入できない.

これを動機にして旅に出るというのがわからない.

どうせなら先生の話をメインにしてしまえば,もっといい感じなんだけどね.

でも,先生の部分っていうのは描き方が少し違って,なんというか若々しい青春の思い出じゃないんですよね.

そうすると,やはり作風とちょっと違う.

そんな感じで,話は中身も盛り上がりもイマイチのまま終わりました.

あと,バトルシーンがかなり多いんですが,これはなんとかしてほしい.

確かに作画としては素晴らしいクオリティを維持しているんです.

キャラの動きもいいしね.

ただ,演出は微妙なんですよ.

ファンタジーであって,アクションものメインではないので,そこばかり映さなくてもいいんですが,なんか味気ない.

これはおそらくこういう演出をあまりやってこなかったせいなのかもしれませんが.

アガルタっていう世界は地下にあるんですが,地下世界の世界観設定が謎ですね.

その辺はリアリティのあるSFという感じではなかった.

どちらかというと,この世界に冒険させたかったのは,新海誠が去年あたり,中東やヨーロッパを旅していた風景を再現したかっただけな印象を受ける.

どうしても前作や前々作と比較しがちになってしまうのが悲しいところです.

が,2回目は見に行かない面白さでした.

ストーリー的にもやはり不満な面が多いですね.

ただ,前作で,大分現実的過ぎて,現実的過ぎる過酷さというか,救いのなさというか,ストーリー展開がいい話だー!!という感じになってなかったので,その辺を全然変えてきたんじゃないでしょうか.

そういう意味では,かなり変わりました.