先日,「おおかみこどもの雨と雪」を見てきました.
なんと感想を書いていいものか悩んでいるうちに数日経ちましたが,一応見てきたことは報告します.
宮崎あおいが声優をやるアニメを見るのは2作目です.
「魔法遣いに大切なこと」が2003年だったから,9年ぶりですか.
この「おおかみこども」は,おおかみ男が出てきた時点でファンタジーなんですよ.
絵的にもうあの画面見ちゃうと,絵本に出てくるタイプの狼男で,もう頭の中でそういうファンタジーにリンクしてしまう.
だから,引っ越した後の畑やったり,学校にいったり,そういうものすごく日常的なシーンが変に見える.
もっと思いっきりファンタジーの世界ならわかるのだけど,たとえば山にしたって雨と雪以外はみんな普通の動物じゃないですか.
あの映画,草木の動きや田舎の生活空間の描き方もものすごく中途半端にリアルに描いてある.
絵の動きとかはしっかりしてるんです.草木の動かし方は頑張ったみたいなので!
だからこそ,ファンタジー要素がすごく浮いて見えてしまう.
いや,わかるんですよ.
これ,ファンタジーをやろうとしているんじゃない.
ファンタジーをやるのであれば,トトロみたいになっていればまったく普通に見られるわけです.
おおかみこどもが出てきたって,思いっきり田舎に暮らす子供たちの話で,楽しいこといっぱいの話にしちゃってもいいわけです.
逆に動物的な,自然的なものの力を前面に出したいのであれば,せめてもののけ姫のように「人語を話す」程度のちょっとでっかい犬とかイノシシでいいわけです.
どちらとも違って,なにかすごく中途半端な気持ちは残る.
細田守監督作品といえば「時をかける少女」「サマーウォーズ」が有名だと思うのですが,その前の「ONE PEACE オマツリ男爵と秘密の島」「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム」という劇場版もやっていました.
そしてもっと前で言うと,これは有名だったと思うのですが,おジャ魔女どれみドッカーンの第40話ですか.
どれも,看板がわかりやすい作品だと思います.
元々原作がある作品が多かったということもあるんですが,どこで楽しんだらいいかはわかりやすい.
オリジナルだったサマーウォーズだって「戦」だからなんにも考えずに見ていて普通に盛り上がれたんです.
でも今回の「おおかみこども」は,細田守監督作品にしては,わからなさの度合いが結構高い.
映画を見ている間は,テーマはわからなくても仕方ないんだけれど,どこで楽しんだらいいのかわからない.
そういうのを細田守で見るとは思っていなかった.
これは子育ての話を描きたいのかなぁ.
ポスターでもわかるとおり,母親が強く,それはなんとなく見ていて伝わることではある.
でも,育てているのが「おおかみこども」であったり,突然田舎に引っ越したりして,先ほど言った通りファンタジーではないにしろ普通の子育てをしているアニメではないんだ.
おそらくこの映画,どういう層に見てほしいのかということを絞り込んだ方がいいのだと思う.
今までの細田守映画って,普通に誰でも見られる話がベースなんですね.
サマーウォーズを見たときに,一番最初に嬉しかったのは小学生からおばあちゃんまで見せて楽しいだろう,と思うことだったのだけれど,今回の映画はそれと同じように考えてはダメなような気がする.
だから,どこかの映画評論サイトであったように「これを子供が見ること」まで考えたら,そんなにいい映画に見えない.
いや,こういうのを押井守が作ってればまったくそんなこと考えないどころか,子供はそもそも見に来るはずがないのですが(笑),細田守だとなかなかそんなこともなさそう.
そういうフィルタリングが,まったくないからうっかり見に行ってしまう.
そして,ターゲットはおそらく俺みたいな人間でもない.
少なくとも今の俺がこの映画を見て,どれだけ本気で友達に「面白かった」と言えるかというと,30%くらいの本気しか出ないと思う.
俺みたいに,アニメばっかり見ていて,漫画原作でもラノベ原作でもゲーム原作でも,とりあえず一番先にアニメを見たがるような人間にとって,現実に近しい苦痛があることはそんなにうれしいことではない.
俺は架空のものだからこそ感動できるし,嘘の話で盛り上がるのが好きなのであって,目に見えて現実の辛さをアニメの中で見せてほしいとはあまり思っていない.
比較するのは悪いと思いつつ,今年の4月に「ももへの手紙」というアニメ映画を見ました.
沖浦啓之監督のアニメですが,これがものすごく良かったんです.
これを見たときは,「アニメってこのくらい楽しめればいいじゃない.もちろん頑張って作ってるけど,そのくらい楽しんでくれれば十分.」と言われた気がする.
でも,「おおかみこどもの雨と雪」を見たときは,「田舎で生きていくのって大変なんだよ.子供育てるって大変なんだよ.ほら,俺たちめちゃくちゃ頑張ってアニメ作ったよ!」なんですね.
そういうのを今,「もう一度みたいな」とは思えない.