一番香ばしいところを切り取って炎上させましょう

最近炎上ごととはあんまり関り合いがなくて、平和な人生を送っていたんですが、ちょっと面白そうなネタがあったので首をつっこみます。

ホリエモンの、「声優ってそんなにスキルいるの?」発言です。

このあたりを見ておくと、走り出しが何なのかは把握しやすい。

http://togetter.com/li/520056

まず、岡田斗司夫ホリエモンがアニメを作ります。内容は、ホリエモンが王立の続編を希望。

このアニメはスタッフも声優もゼロから集めるということで、声優に関する質問が多数飛び始めました。

声優はどうやって集めるかという議題に関して、企画に対する出資者にオーディション参加資格を与えるという。

これに対し、アニメ制作関係者(らしき人)から、「養成所は金取る代わりにスキルを上げている、一万円で参加できるからお得というわけでもない」という旨の反論が。

そこでホリエモンが言ったのが、冒頭の「そんなにスキルいるの?」発言。

それを補助するかのうように「売れてるタレントには常に声優のオファーはある」「俺にすらある」と発言し、見事炎上!!

ホリエモンの返しにも、落ち度はあるし、そういう抜け目のあるところが面白さなのだけれど。

ネットというのは、このようにして、最も香ばしそうな場所だけを抜き出されて拡散されるので、前後の文脈や本意なんてものは特に関係ないのです。

そういうところまで読み取って擁護してくれるファンというのは、すごくいい人だから大事にするとして、そうでなく批判してくる人がいるのはネットの特性上仕方のないことです。

ちなみに、この一万円払ったらオーディションに参加できる企画。

見方によっては、ホリエモンに反発するような意見も出ることは理解できる。

■養成所派

アニメに声を当てたり、吹き替えをやったりする声優というのは、特殊な職業であり、特殊なスキルを必要とする。

ましてやそれを本業にして、それで生きていくのであれば突出した才能やスキルというのが当然必要になってくる。

そういうスキルや才能を育てるために、養成所はが存在している。

元来、そういった形でスキルがある人間だけを採用してきたアニメ制作のオーディションは、現代日本の声優界を支えてきた業界の形である。

ここに、突然「1万円払ったら誰であろうとオーディションしてあげるよ」なんてアニメ制作企画が出てきたら、この声優のスキルの高さや声優業界そのものを維持できない。

そしてそんなもので、食っていける声優になるとも思えない。

■斗司夫&ホリエモン

これはFREEexと基本的な考え方は一緒である。

仕事は権利であり、権利に対して対価を払う人間は必ずいる。あとは、対価の値段が問題になるだけ。

対価を低くして、関わる人数を多くすることでクオリティを担保できるはず、という考え方である。

これの強力なところは、物量とポテンシャルとハードルの低さ。

10万円払って養成所に通った人間、10人をオーディションし一人を採用するとしよう。

採用するアニメ制作会社は声優に対して20万円お金を払うとしよう。

こうすると、採用された一人は10万円の売上となり、他の9人は-10万円の売上になる。

ここで養成所は100万円を売り上げる。

次に、斗司夫&ホリエモン方式を考える。

1万円払って、素人100人がオーディションを受け、一人を採用するとする。

採用した場合、20万円払うとしよう。

こうすると、採用された一人は19万円の売上となり、他の99人は-1万円の売上になる。

ここで養成所は0円の売り上げになる。

そう、機会を教授できる人口を増やして不利益を被る人間を多くする代わりに、各々の不利益の量が減る。

ホリエモン発言の意図の行き着く先はこのあたりまでくるとわかりやすい。

結果的には、母集団が違っていても、これだけ差を作れば、採用された一人ってどっちも対して差はないじゃない?

そして、このほうが無駄なコストがかからないし、「アニメ制作」にかかわれる人が増えるよね(=俺達のファンが増えるよね)、という考え方だ。

そして、これの実例に近いものを、実は俺達は日々目にすることが多い。

どんな楽器をやっていても、今やオーディションテープを事務所に持ち込むより、ニコニコ動画に投稿しまくった方が、効果的であり自分が嬉しい。

そして、事実オーディションテープを事務所に持ち込んで上手く行った人と、ニコニコ動画から上手く行った人との間に、そんなにスキル的な差を感じることはない。

ちなみに今回の発言、炎上マーケティングとしてはなかなかの効果が期待できる。

ニコ生だけの宣伝に限らず、岡田斗司夫ファンやホリエモンファン以外に知らしめておくのは、このアニメの企画としてはアリな方向性なので、たとえ炎上であろうが上手く行っているように見える。