『言の葉の庭』を見てきた。
前作、『星を追う子ども』から2年。
あのときは、ばちくんと一緒に新宿で見た記憶がある。
ちなみに同時上映は、『だれかのまなざし』。
さて、
『言の葉の庭』本編の感想といこう。
冒頭、一番最初は雨の風景から始まる。
この瞬間の水と雨と樹木の描写が、あまりにもやり過ぎなレベルで綺麗だ。
なとまぁ日本のアニメーションはここまでできるのかと思いつつ、よくこれだけ雨の風景を良く描くものだと感心する。
雨というのは、どう考えても手間がかかる。
画面に無駄な線が入るし、地面ならまだしも水面に落ちた際には跳ね返りや波紋を描かなければならない。
その動きを入れた上で、あの冒頭の絵の綺麗さは凄まじい。
始まってしまうと、なんだかこの異様なレベルで実写チックな水面ではなくなるのだけれど、それでも雨の背景描写は延々と続いていて、見事だ。
ところどころに出てくる新宿御苑の水面はやはりすごい。
新海誠のアニメーションの背景の綺麗さは、磨きがかかっているとはえ昔から綺麗だった。
しかし、昔の作品だとキャラクターの表情やデザインはイマイチで、人物を動かすとなんかあまり綺麗に感じないという欠点があった。
これについては、秒速あたりからかなり改善されて、アニメのキャラクターながらもしっかり背景の綺麗さについていけるくらいのものになった。
『星を追う子ども』では、キャラクターは動かし過ぎな感じはあったのだが、そこはかなりバランスがとれてきている。
今回の作品ならば、特に違和感なく見られるだろう。
ここまで、絵の綺麗さは流石のクオリティで申し分ない、ということで褒めちぎってみた。
しかし、文句なしに面白いアニメというわけでもない。
これは前からそうだったのだけれど、新海誠のアニメというのは絵の綺麗さを楽しむには十二分なレベルではある。
ただ、それはアニメであっても、一本のまとまりあるお話として劇場版の1時間くらいの作品にする必要はあるのだろうか。
話としては、別段そんなに面白い話ではない。
DVD特典映像なんかを見ていると、たびたび監督はお客の意見というのを気にしている。
特に秒速のときはあまりにもハッピーエンドにならないので、いろいろ言われたのだろうが。
それを怖がっているのかもしれないが、あまり視聴者を驚かせないし、裏切らないし、悲しませないし、びっくりさせない。
そのせいで、話としてはあまり変化がないし、主人公がなにも成さない。
主人公もヒロインも、雨の日の平日の朝からk新宿御苑にいるということは、いろんなものをサボっている。
そういう、逃げ出している場所での優雅さとか、綺麗さみたいなものは、絵からすごく伝わってくる。
でも、そこからなかなか動きがないし、動きの振れ幅が小さい。
そういうわけで、今回も、新海誠の劇場版アニメーションは、「話を作る必要はあったのか?」と「この綺麗な絵はずっと見ていたい」が同居するようなアニメでした。
1,800円だとちょっとオススメできないけれど、レイトショーくらいの値段なら入ってみるといいかもしれません。
ちなみに上映時間は同時上映含めても、1時間ちょっとなのでそんなにお時間取りませんよ。
以下はストーリー的な意味ではないのだけれど、すごく重要なネタバレを含む。
もし見に行こうとしている人がいるなら、この驚きは是非その場で体感していただきたいので、読まないでほしい。
普通、上映される映画には、上映前に予告編が大量に差し込まれている。
劇場が用意するものもあるし、配給会社が入れているものもある。
だが、上映終了後、本編の次回予告でもなく、まったく関係ない映画の宣伝が4分も入ることは稀だろう。
そう、
今回の『言の葉の庭』、上映終了後に鈴木敏夫が『風立ちぬ』の予告編をぶちこんでいたのだ!!!!
どのくらい偉くなると、こんなひどいことができるんだwwwww
なにしろアニメーションを作っているのは宮崎駿だ。
何がどう売れなくなって、誰に文句言われようが気にしない。
お客さんに何を言われたって、「俺はうるさいこと言うオタクのおじさんたちのためにアニメつくってるんじゃない!」と怒鳴ってポニョを作るようなオヤジだ。
その辺、さっきまで見ていた映画の薄さを際立たせるかのように、面白そうな話の予告編を作ってくる。
おまけに宮崎駿のアニメーションというのは、動いてナンボ。
全力出した雨の風景一枚出して「綺麗だ」って言わせて、それを繋いだようなアニメとはまったく違って、実にメリハリがあり動きが際立ったアニメーションの予告編だ。
嫌がらせとしか思えない!!!