俺の出身の研究室ではデバイスを作っている。
力覚デバイスというのだが、まぁ説明すると長ったらしくなるのでざっくり。
マウスとかゲームコントローラのようなインターフェースで、バーチャル空間の反力も出力できるようなデバイスである。
そういうデバイスは総じて高いのだけれど、マウスにくっつけて遊ぶくらいの軽い物ならお安くできますよってことで、SPIDAR-mouseというやつを、最近ではニコニコ超会議に出したりしている。
http://sklab-www.pi.titech.ac.jp/blog/introduction/spidar-mouse/
ただ、これがどうもかんばしくなく、売れ行きが良くないようで。
この前久しぶりに研究室を訪れた際に、売りつけられた。
正確に言うと、買わされた。
俺が遊んでいる間に、教授が領収書を切っているというわけ分からん状態になっていて、「はい」とか言い出す。
領収してないのに先にちぎって渡すとか斬新!!
なんて言っている間に俺の財布から3500円が消え、まったく売れなかったデバイスを押し付けられた。
そもそもアカデミックな研究で作ったものを、売って普及させるっていうのが怪しいんだけれどwww
さて、
ではなぜSPIDAR-mouseは売れないのだろうか?
原因は3つ。
①どうしたらいいかわからない。
②「へー」くらいの感動しか得られない。
③面白そうに見えない。何をすればいいの?
①どうしたらいいかわからない。
よくわからないものを、「こういうものを自分で作れます」と売り出されても、初心者にはどうしようもない。
売りつけるにしても、作ったものをセットにして配るべきである。
こんなものはしょせんコンテンツを楽しむものでしかない(少なくとも安価で普及させたいなら)。
だから、1個や2個つけただけでは意味がない。
そりゃドラクエレベルで面白いゲームなら理解できるが、しょせん研究の片手間に作ったような単調なゲームだ、50や100ついて当たり前。
「自分で作れますよ」を売りにするのであれば、オープンソース化。
それも、デバイスのソースとサンプルを公開するだけなんて甘っちょろいことをやっていては使えない。
作ったコンテンツをすべてオープンソースで公開する。
で、買ってくれた人に追加して作ってもらう。
そのくらいの場所と、初期状態を提供しなければ、買う気になれない。
買ったとしても遊んだり、盛り上がったりできない。
②「へー」くらいの感動しか得られない。
これは人それぞれかもしれませんが、現状のデバイス、力が弱すぎです。
完全にメカニカル、もしくはソフトウェアの改良でクリアにできます。
なんとなく感じるではなく、こういうのはちょっと大げさに引っ張られるくらいの方が、インパクトがあっていいです。
ぶっちゃけ、触って動かしてみないとわからないものなので、そこでインパクトが取れなきゃ話にならない。
③面白そうに見えない。何をすればいいの?
これは完全に見せ方の問題です。
確かに技術的には良いものだし、やってみれば結構面白かったりする。
ただ、説明の段階では全然面白そうに見えない。
なぜかというと、何をすると面白いのかが分からないから。
こういう、「何でもできる」というものは、実際には何でもはできません。
別に接続するだけで、マウスに触れるテクスチャすべてに衝突して、反力を返すわけでもない。
好きなゲームに、ちょろっとパッチを当てるだけで楽しめるようなものでもない。
「自分で作るとこんなのもできます」
「ほら、何でも作れそうでしょ?」
「何か面白いものが作れるよ」
「何でも」と「何か」というのがすごく曲者で、こういうものは大抵面白くないです。
例えていうなら、「来週になったら面白そう」という展開を延々続けて、最後まで面白くならない駄作アニメのようなものです。
設定は面白い。
だから、その上には「何でも」載せられる。
だから、「何か」が起こりそうな話までは簡単に作れる。
でも、大抵はその「何か」を起こせるだけの人や物がないので、何も起きないです。
つまり、設定だけ面白いけど話が全然面白くないという出来になります。
ちなみに、かなりマニアックな人でない限り、大抵の人はアニメは見てから面白いとか、面白くないと判断します。
そして、大多数の人は、話の面白さや絵の出来で面白いと判断してくれます。
それと全く同じですね。
「何か」の部分を載せて見せなければ意味が無い。
たとえ「何でも」自分で作れるものにしても、最初の「何か」がなければ、これでどういう面白いものが作れるのかがわからないでしょ。
というわけで、せめて「買った人に後からアプローチはしっかりしろよ。アップデートとかあるし、コンテンツも作ってるわけだから。」と伝えてきたのに、なんの音沙汰もない。
こりゃ本棚の上に積まれても仕方ない。