今期の非常に面白そうなアニメ,魔法少女まどか☆マギカ.
「第3話が!」ということで,話題にはなっていますよね.
魔法少女アニメなのに,首が飛ぶとか.
しかしこのアニメ,見ればわかりますが,その部分を除いても非常に面白い構造をしているアニメです.
とりあえずわかりやすいところから順番に考えます.
まずは宣伝文句としてマトモそうなものを考えてみましょう.
「なのはの監督だった人が魔法少女アニメを再び!」
とか,
などがパッと思いつく.
この宣伝文句だけ見ると,非常に入り込みやすい,見やすい宣伝文句が出来上がっている.
というのも,魔法少女ということを公開しているので,「魔法少女アニメ」として見る人が大多数.
そのため,魔法少女というものについての説明をダラダラとしなくても,見る人はついてこられる.
こういうところに新しいものを使ってしまうと,宣伝文句にはちょっと長くて書きにくい.
たとえば,コードギアスのようなアニメの宣伝文句というのは,非常に考えにくい.
ロボットアニメというには,ロボット的ではないし,SFというのもなんか憚られる.
また,プロット段階での設計も非常に単純.
「主人公が魔法少女となり,人間を脅かす魔女たちを退治します.」
これが大筋.
このプロット,とてもわかりやすい.
先人たちが大分開拓している大筋だし,設定としてゴチャゴチャした複雑で微妙な立ち位置のものを大量に説明する必要がない.
だから第1話を作るときに,説明口調で世界の説明をする部分が少なくて済む.
細かい設定等をいきなり出しちゃっても,視聴者が全然ついてこられる.
そうでない例が,さっき挙げたコードギアス.
コードギアスではギアスの説明やら,ルルーシュの身の上の説明,学校や,ブリタニアの説明をしなきゃいけない.
その上ロボットに乗るスザクが出てくるんだから,もうわけがわからない.
こういう,プロット段階がかなり複雑に出来上がっているアニメというのは,たいてい凝りすぎていてイマイチ流行らない.
ギアスは,大分上手く作った方です.
あまり流行ってないのでいうなら,WOLF'S RAIN,Ergo Proxy等がいい例かと思います.
ここまで,宣伝やプロットというのは非常にわかりやすく,加筆説明する必要がないようなものばかりで構成されている.
そして,ここからが非常に斬新で,宣伝文句の「新しい」という部分にあたります.
ちなみに,まだまだ放映中ですが気にせずネタバレしていきます.
5話まで見ていない方は,あまりお勧めしません.
まず,今までの魔法少女アニメというのは,基本的に第1話で魔法少女になります.
変な動物など(使い魔とか)が案内役で,第1話で悪者が襲ってきて契約!
おお!すごい力を秘めていた!
という展開が,今までの魔法少女アニメです.
これには難点があって,魔法少女によるバトルをメインに据えるのであれば,ジャンプ方式で主人公が強くなり,さらに敵も強くなっていかなければなりません.
第1話で主人公が魔法少女になるということは,そのような展開が始まるのがとても早い.
そうなってしまうと,毎回新しい敵を考えたとしても,話の展開が一本化されてしまって,マンネリ化する.
とくに,ドラゴンボールのように1人の敵を何週にもわけて倒すものと違い,魔法少女アニメは1話で敵1人くらいが常套手段だったので.
しかし,まどか☆マギカは,第1話で,動物は出てくるんですが魔法少女にはなりません.
5話まで来ましたが,いまだに普通の女の子です.
では,5話までかけて何をやっていたか.
魔法少女になることによって生じる,嫌なこと,孤独っぷり,などの
魔法少女になるために必要な覚悟を,描き続けています.
ここで重要なのはテンポ.
魔法少女ものは基本的に主人公が落ち込んでも,1話で復活して敵を倒します.
かつての魔法少女アニメ,プリキュア,おジャ魔女,CCサクラ・・・古くはひみつのアッコちゃん.
これらの主人公は,基本的に前向き.
みんながみんな元気いっぱい!という訳ではないですが,みんな前向きに魔法少女をやって,それが割と楽しそうに描かれます.
しかし,まどか☆マギカでは,これとは反対に主人公をうじうじさせ,アニメーションのテンポを悪くすることで,感情描写が非常に鮮明にしています.
さぁ,これ,この展開,この流,どこかで見たことありません?
そう,かつてのロボットアニメ.
毎回主人公が敵に勝ち,基本的に落ち込むこともなく,まっすぐに前を向いた熱血青年によるアニメから一転.
ウジウジして,「僕はもう戦いたくないんだ.」と言い放つ,アムロ君(ガンダム)やシンジ君(エヴァンゲリオン)と同じ構成になっている!
つまり,魔法少女まどか☆マギカは,かつてのロボット系アニメ内でガンダムがブームを巻き起こしたり,エヴァがブームを巻き起こしたときと同じ構造になっている.
そして,まどか☆マギカでは,今まで普通の女の子だった子が,ある日突然不思議なものに出会って魔法少女になる!
という,今までの主人公が何の迷いもなく即断即決していた,普通の女の子→魔法少女という流れに疑問を投げかけている.
ガンダムでもエヴァでも主人公たちは,ロボットに乗ること自体に抵抗を覚え,悩んでいる.
「もう乗りたくない」「なんで僕が」という疑問をひたすらに問いかけている.
これと同様に,今まで何の疑問もなく魔法少女に変身させてきたところに疑問を投げかけている.
普通の女の子という日常から,魔法少女という非日常に入るときに,もっと一般人的な立場から生じるであろう葛藤を,もう5話も描いている.
このように,プロットの単純さに対して,設定の細かさ,心情描写の鮮明さ,などの深さがかなりあるので,非常に面白い構造になっている.
第1話は見やすい,入り込みやすく,作りこんである設定が奥深いので続けてみられる.
展開がパターンになっている他の魔法少女アニメと違って,毎回先が読めない.
これで,主人公の戦闘シーンのテンポの良さが最高だったら,かなりヤバイ.
シンクロ率が400%になったときのような感じ.
これに追加してもう一つ書かせていただきます.
さすがに新房昭之の演出だけあって,ちょっとこれはすごいものを見ている気がする.
今回,シャフトっぽい実写カットがほとんどない.
そしてカットの切り方が上手い.
化物語をやったときも相当上手かったけど,この人はセリフを乗せたときのカットの切り替えがものすごく上手い.
ほとんど説明みたいなセリフやら,人の顔が映ったり,人物その他の動作で見せているカットじゃないのに,全然画面を見ていたくなる.
通常,アニメというのは,絵が完成してから「ダビング」という作業で初めて効果音とBGMと声を入れます.
監督や演出家は,この時点まで,音は頭の中で想像するしかない.
声優が声を当てるときにOKを出すのは,音響監督だから,下手したら本当にこの時点までまったくセリフを聞かないってこともある.
だから,セリフが乗ったときにカットの切り替えがぴったりというのは,異常なんですよ.
BGMの拍と,深刻になる瞬間のセリフと,夕日が隠れるタイミングがぴったり一致しているとか,一体絵コンテ段階でどういう頭の構造していると可能なんだろうか.
いや,技術的には可能だけど,そういうことを絵コンテ段階で考え付いているのがすごい.
背景のビルの配置まで計算済みですか.
カット数の多さはいつも通りですが,やはり日に日に上手くなっている.
Soul Takerのときとは比べ物にならないくらいに.
それと第4話で,異空間に入り込んだ時の,まどかの絵,あれは誰が描いたんだ.
ちょっと今までと作画が違うんだけど!
魔法少女なしの不安定な一般人が入り込んだときは絵が違うんだけど!
さて,さらにこの先の予想を勝手にしましょう.
大体こういうのは間違っている.
魔法少女の敵は魔女ですよね.
これって,根本的には同じじゃないですか?
おジャ魔女のように魔女と魔法使いが仲が悪いとか,そういう設定じゃないと思うんですよ.
そういう,なにか派閥争い的なものではなくって,もっと魔女は人から離れた醜いモノとして描かれている.
これって,グリーフシードを争い続けた魔法少女はやがて,第3話のように死ぬか,魔女になるってことなんじゃないかと,勝手な予想を立ててみる.
普通に純粋な女の子が,ほかの子とグリーフシードを奪い合って,やがて魔女になるとか・・・
面白そうだから2クールで!!!