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狩りの途中で足に怪我をした男がいる
治療の当てのないサバンナの真ん中で
足は腐り死に神が忍び寄る
やっと迎えにきた飛行機に男は乗り
眼下に広がる純白の世界を見る
光り輝くそこは雪をかぶった山の頂だ
山の名前はキリマンジャロ
男は想う
自分が向かっているのはそこなんだと
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俺はこの話が大っ嫌いだ
男は過去ばかり思い出す
死に際で必死に自分が生きていた証拠を探すように
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ある虎猫がいた
その猫は、好きでもないいろんな飼い主たちに飼われながら
百万回死に、生き返って百万回生きた
猫は死ぬのは怖くなかった
ある時猫は、自由な野良猫だった
そいつは白い雌猫に会い
二匹は一緒に幸せに暮らした
やがて月日が経ち
白い猫は歳をとって死んじまった
虎猫は百万回泣いて
そして死んだ
もう二度と生き返らなかった
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俺はこの話が嫌いだ
俺は猫が嫌いだ
覚めない夢でも見てるつもりだったんだ